あらすじ
島の暮らしを形づくるのは、漁と海女の仕事と、村の噂。新治と初江の仲はすぐに村中に知れ渡り、初江を狙う家柄のいい青年・安夫の嫌がらせや、初江の父の反対が二人を引き離そうとします。新治は言葉少なに、漁師としての仕事ぶりで自分を示そうとします。
読みどころ
『金閣寺』と同じ作者とは思えないほど、まっすぐで健やかな恋の話です。海と島の描写がとにかく美しく、読んでいると潮の匂いがしてくる。短いので、三島由紀夫を初めて読む人の入口にちょうどいい。
こんな人に
おすすめしたいのは。難しい純文学より、まず美しい恋愛小説から古典に入りたい人。
何度も映画になっている作品です。読み終えたら『金閣寺』と比べてみると、同じ作家の振れ幅に驚きます。
向かないかもしれない人
恋の行方を素直に追う話で、三島らしい屈折した心理を期待すると拍子抜けします。嫌がらせや親の反対といった筋立ても古典的なので、意外な展開を求める人には単純に映るかもしれません。
比べ読み
『火花』又吉直樹
星の付き方まで同じ、短めで入りやすい二作です。『火花』は売れない芸人が先輩を見つめる十年で、笑いを作る苦しさが前に出ます。『潮騒』は島の漁師と海女の恋を、村の噂や父の反対を越えようとする若者の目で追う健やかな話。海の明るさに浸りたいなら三島作品、芸に打ち込む人の影を読みたいなら又吉作品を。
『変身』Franz Kafka
どちらも短い古典で、名作の入口に向いています。『変身』は虫に変わった息子を家族が扱いかねる暗い寓話で、再読性は満点。『潮騒』はまっすぐな恋の話で、海と島の景色の美しさが読みどころです。明るい気分で古典を始めたいならこちら、読み返すたびに意味が増す話を求めるならカフカを。








