あらすじ
屋敷に出入りするのは、教授の養子で数学を教えるアーネッソン、チェスの名手でもある数学者パーディー、科学者のドラッカー、教授の姪のベル。調べるのは素人探偵ファイロ・ヴァンスで、地方検事マーカムとヒース部長刑事が付き添います。事件はひとつで終わらず、そのたびに別の童謡が添えられていきます。
読みどころ
原書は1929年。ヴァンスが出てくる長編十二作の四作目で、前作が『グリーン家殺人事件』です。マザー・グースの歌になぞらえて人が死ぬという趣向は、この本が先駆けとされています。子どもの歌の無邪気さと、数学者ばかりが集まる屋敷の理屈っぽさ。その取り合わせが気味悪い。ヴァンスの蘊蓄は長いので、そこは急がずに。
こんな人に
おすすめしたいのは。見立て殺人の古典を、新しい訳で一度読んでおきたい人。
横溝正史の『獄門島』と『悪魔の手毬唄』は、この本に触発されて書かれたとされています。
向かないかもしれない人
読みやすさは星3で、ヴァンスの長い蘊蓄が筋の合間に挟まります。会話のテンポで先へ進む現代ミステリに慣れた人には、もどかしく感じられるかもしれません。
比べ読み
『三つの棺〔新訳版〕』ジョン・ディクスン・カー
どちらも黄金期の英米本格です。『僧正殺人事件』は童謡になぞらえた連続殺人、『三つの棺』は密室の仕掛けそのものが主役で、第17章には密室の種類を並べる講義まで入ります。見立ての気味悪さを味わいたいならヴァンスから、トリックの理屈を突き詰めたい日はフェル博士へ。
『黄色い部屋の謎』ガストン・ルルー
1907年の『黄色い部屋の謎』は、抜け道のない密室を書くという意気込みで生まれた古典で、読みやすさは同じ星3で物語性は一つ低い星4です。年代順に古典をたどるならルルーが先、事件が次々に重なる展開を求めるならこちらを先に開くのが合っています。








