あらすじ
小説全体が、ルポルタージュの体裁で書かれています。管理人、近隣の住人、競売で部屋を落札した男、その家族、元の持ち主。数十人の証言が積み重なるうちに、部屋にいた人々が誰で、なぜそこにいたのかが見えてきます。背景にあるのは、バブル崩壊後の住宅ローンと、不動産の競売をめぐる事情です。
読みどころ
一人の探偵が謎を解くのではなく、無数の証言のすき間から、それぞれの家族の事情が浮かんでくる書き方が新鮮です。登場人物が多いので、最初は人物表を手元に置きながら読むと楽。事件の中心にいないはずの人々の話が、一番心に残ります。
こんな人に
おすすめしたいのは。住まいやお金をめぐる社会の仕組みに、関心がある人。
同じ作者の『火車』と並んで、社会派の代表作とされる長編です。
向かないかもしれない人
読みやすさは星3つ。数十人の証言で組み立てられ登場人物が多いので、人物表を見返しながら読むのが面倒な人や、一人の探偵が鮮やかに謎を解く展開を求める人には向きにくい。
比べ読み
『罪の声』塩田武士
どちらも一つの事件を、周辺の人々の人生から照らす社会派。『罪の声』は二つの側から取材を重ねて真相へ近づく形で、筋を追う手すりがあります。理由は数十人の証言を積み上げるルポの体裁なので、登場人物の多さに慣れが要る。先に罪の声で取材ものの読み方をつかむと、理由にも入りやすい。
『護られなかった者たちへ』中山七里
読みやすさは『護られなかった者たちへ』が星4つで、刑事が一人で事件を掘り下げる筋なので追いやすい。理由は探偵役を置かず、住宅ローンや競売といった仕組みを証言のすき間から浮かび上がらせます。福祉の制度を考えたい気分ならあちら、住まいとお金の事情に関心があるならこちらを。














