あらすじ
六歳で母に去られ、兄や姉も次々と家を出て、酒に溺れる父もやがて姿を消す。カイアは、貝を掘って売り、鳥や虫を観察しながら、湿地の自然だけを友に育ちます。字を教えてくれた少年テイトとの出会い、そして町の青年チェイスとの関係。やがて物語は、事件をめぐる法廷の場面へと進みます。
読みどころ
作者は動物学者で、湿地の生き物や植物の描写が、ほとんど詩のように美しい。ミステリとしての謎解きよりも、カイアという一人の女性の生き方に心を持っていかれます。アメリカで長くベストセラーの上位に居続けたのも納得の一冊です。
こんな人に
おすすめしたいのは。自然の描写に浸りながら、心を揺さぶる物語を読みたい人。
2022年に映画化されました。厚い本ですが、後半は一気に読み進められます。
向かないかもしれない人
謎解きより一人の女性の生き方に比重がある本です。犯人探しの論理を主に楽しみたい人や、湿地の生き物や植物の描写が長く続くのを退屈に感じる人には、前半の歩みが遅く映ります。
比べ読み
『天使のナイフ』薬丸岳
事件の裏にある人の事情へ重心を置く二冊です。『天使のナイフ』は少年法のあり方を、傷つけられた側と傷つけた側の双方から問う社会派で、分量はふつう。『ザリガニの鳴くところ』は湿地でひとり育った女性の生き方と、動植物の細かな描写が厚みを生みます。制度を考えるなら薬丸作品、自然の暮らしに浸るならこちらを。
『Nのために』湊かなえ
謎解きの外側に恋愛の要素がある点で近い組み合わせです。『Nのために』は四人の若者の嘘と関係を追う作りで、終盤の一行の受け取り方が分かれます。こちらは字を教えた少年テイトや町の青年チェイスとの関係が、やがて法廷の場面へつながっていく厚い長編。短めに試すなら湊作品、まとまった休みにはオーエンズを。








