あらすじ
「商人と錬金術師の門」は時間旅行を扱いながら、起きたことは変えられないという条件を守ったまま物語を成立させます。「不安は自由のめまい」は分岐した並行世界と通信できる装置が普及した社会の話。ほかにソフトウェアの生き物を育てる中編も収録。
読みどころ
各編のあとに著者自身の創作ノートが付いていて、どの理屈からこの話を組み立てたのかが本人の言葉で書かれています。作品と合わせて読むと、発想の出発点がよく見えてくる。
こんな人に
おすすめしたいのは。一編ごとに考え込みながら読み進めたい人。
先に出た短編集が『あなたの人生の物語』。単行本は2019年刊です。
向かないかもしれない人
読みやすさは星3で、一編ごとに理屈を受け止めながら進む本です。起伏のある筋や人物の活躍で引っぱられたい人は、思考実験に近い運びを静かすぎると感じる場面が多いでしょう。
比べ読み
『言壺』神林長平
一つの理屈から世界を組み上げる点で比べやすい二冊です。『息吹』は時間旅行や並行世界との通信など題材が一編ごとに異なり、創作ノートで発想の元も分かります。『言壺』は書いた文章を機械が直し、直された言葉が現実を動かすという言語の話に絞った作り。題材の幅を楽しむならこちら、言葉そのものなら神林作品を。
『宇宙のランデヴー』アーサー・C・クラーク
星の付き方が同じSFでも、形はまるで違います。『宇宙のランデヴー』は太陽系に入り込んだ巨大な円筒を調べる一本の長編で、探索の緊張で引っぱります。こちらは機械生命の報告書やバグダッドの商人の話など、短編ごとに考え込ませる作り。長い探索を味わうならクラーク、一編ずつ立ち止まりたいならテッド・チャンを。









