あらすじ
収録作はどれも前提が一つだけ違う世界を描きます。天まで届く塔を登り続ける「バビロンの塔」、神の奇跡が実際に目撃される世界を扱う「地獄とは神の不在なり」、数学の基礎が崩れる「ゼロで割る」。理屈をどこまでも詰めた先に、人の感情が置かれています。
読みどころ
表題作はネビュラ賞を受けた中編で、映画『メッセージ』の原作です。物語の順番がなぜこの形なのかが最後まで読むと分かる作りになっていて、二度目に読むときの印象がまったく変わります。
こんな人に
おすすめしたいのは。設定の理屈をじっくり追うSFが好きな人。
同じ著者の二冊目の短編集が『息吹』。映画版は2016年公開です。
向かないかもしれない人
どの短編も一つの前提から理屈を詰めていく作りで、読みやすさの星は3つ。説明よりも筋の起伏や派手な展開を楽しみたい人には、テンポがゆっくりに思えるかもしれない。
比べ読み
『宇宙のランデヴー』アーサー・C・クラーク
どちらも異星の存在を扱うが、『宇宙のランデヴー』は巨大な円筒の内部を探る調査の緊張で読ませ、本作の表題作は言語の解読を通して時間の見え方が変わる。宇宙の謎を外側から追いたいならランデヴー、理屈を内面へ折り返す話を読みたい時は本作へ。
『言壺』神林長平
どちらも言葉が世界の見え方を変える話。『言壺』は機械に直された文章が現実になっていき、書く仕事の人ほど身につまされる。本作は異星の言語の解読から時間の感覚が揺らぐ。言葉と道具の関係を考えたい時は言壺、理屈を突き詰めた短編を読みたい時は本作を。









