棚の前で/SFの部/ハロー・ワールド

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棚の前で

『ハロー・ワールド』講談社文庫の書影書影:版元ドットコム

ハロー・ワールド

  • SF
  • 講談社文庫
  • 分量:ふつう

仲間と作った広告ブロッカーが、なぜかインドネシアでだけ急に売れ出した。

おすすめ度
★★★★★
読みやすさ
★★★★★
物語性
★★★★★
実用度
★★★★★
再読性
★★★★★

おすすめ度は、棚の前でが「まず一冊」としてどのくらい強く勧めるかを示す数字です。物語性・再読性・読みやすさと分量から決めています。

版元
講談社
判型
講談社文庫
刊行
2021年3月
ISBN
9784065228227

あらすじ

五つの話が同じ主人公でつながる連作です。表題作のあと、「行き先は特異点」では位置情報と自動運転、「五色革命」ではバンコクのデモとドローン、「巨象の肩に乗って」では分散型SNSのマストドン、「めぐみの雨が降る」ではビットコインが題材になる。はじめは日本から画面越しに手を貸すだけだった文椎が、話が進むごとに事件の真ん中へ引き寄せられていきます。

読みどころ

作者はもとソフトウェア技術者で、書かれている技術がどれも、今日ニュースで見てもおかしくない範囲に収まっている。文椎は万能のハッカーではなく、人のコードを借りて直し、仲間に助けられて何とかする人です。その等身大の手つきがあるから、国家と一人の技術者という釣り合わない勝負が絵空事に見えない。第40回吉川英治文学新人賞を受けています。

こんな人に

おすすめしたいのは。ネットの仕組みや、アプリの裏側がどうなっているか気になる人。

同じ作者の長編なら、軌道上の奇妙な物体から話が広がる『オービタル・クラウド』がこの本の手触りに近い。

向かないかもしれない人

位置情報や自動運転、分散型のSNSやビットコインといった技術の話が次々に出てくる。仕組みに興味が持てず人物の感情だけを追いたい人には、説明が多く感じられるかもしれない。

比べ読み

『一九八四年』ジョージ・オーウェル

どちらも国家と個人の力の差を扱うが、『一九八四年』は監視が完成した社会を、本作は今ある技術で抗う一人の技術者を書く。読みやすさは本作が星一つ上。ネットの今を手がかりに考えたいなら本作から、重い古典に腰を据える週末なら一九八四年を。

『月は無慈悲な夜の女王』ロバート・A・ハインライン

自我を持ったコンピュータが独立の計画を立てる『月は無慈悲な夜の女王』と、広告ブロッカーやビットコインを題材にした本作。前者は月世界の訛りを写した文体に慣れが要り、読みやすさの星は3つ。技術ニュースの延長で読みたい時は本作を先に、骨太な古典に浸る時は月のほうを。

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