あらすじ
工場の敷地には店も住宅も川もあり、独自の生態系ができています。工場鵜、工場トカゲ、洗濯機を運ぶ黒い獣。時間の感覚が次第に狂い、語り手が誰なのかも曖昧になっていきます。
読みどころ
働くことの不条理を、幻想の手つきで書いた作品です。事件は起きませんが、読み終えると自分の仕事の輪郭まで怪しく感じられます。
こんな人に
おすすめしたいのは。不条理な職場小説を読みたい人。
同じ作者の『穴』は芥川賞を受けた中編です。
向かないかもしれない人
事件は起きず、時間の感覚も語り手の輪郭もぼやけていく作りです。筋の分かりやすい展開やはっきりした説明を求める人には、つかみどころがなく感じられそうです。
比べ読み
『処刑人』シャーリイ・ジャクスン
『処刑人』は大学の寮に入った17歳の足もとが崩れていく話で、幽霊も怪物も出てこない怖さという点で『工場』に近い手触りです。あちらは自分の考えが本当に自分の考えなのか怪しくなる感覚、こちらは仕事や職場の輪郭が狂っていく感覚が中心。働くことの不条理に引っかかりがあるなら『工場』から。
『ねじの回転』ヘンリー・ジェイムズ
『ねじの回転』は幽霊が実在するのか語り手の思い込みなのかが揺れる古典で、読みやすさは星2とこちらより一段低めです。どちらも語りの足場が曖昧になる作品なので、現代の日本語で不条理に慣れたいなら先に『工場』、信頼できない語り手の原点に触れたいならジェイムズを。










