あらすじ
尾道、奥飛騨、津軽、天竜峡。一人ずつ、旅の途中で出会った奇妙な出来事を語っていきます。どの話にも、岸田道生という画家の「夜行」という銅版画が現れ、夜の底へ引き込まれるような終わり方をする。そして最後に、語り手の大橋自身の話が待っています。
読みどころ
『夜は短し歩けよ乙女』のような軽快さを期待すると面食らいますが、静かで、ひんやりとして、どこまでも続く夜の気配が見事な本です。はっきりした答えは出ない物語なので、分からなさを楽しめる人に向いています。
こんな人に
おすすめしたいのは。夜行列車や、知らない町の夜道に惹かれる人。
同じ作者の明るい作品を読んでから手に取ると、落差にやられます。冬の夜長にどうぞ。
向かないかもしれない人
はっきりした答えが出ないまま、夜の底へ引き込まれるような話が続きます。謎がきちんと解かれる話や、作者の軽快な作品と同じ調子を期待する人は戸惑うかもしれません。
比べ読み
『営繕かるかや怪異譚』小野不由美
古い家や旅先の夜に潜む怪異を扱う点で並びます。『営繕かるかや怪異譚』は障りを修繕で鎮める一話完結の連作で、怖いのに温かさが残る。こちらは答えの出ない夜の気配がどこまでも続く、ひんやりした手ざわり。寝る前に一篇ずつならかるかや、分からなさに浸りたい夜は夜行を。
『穴』小山田浩子
怪異と説明しない不穏さが共通しています。『穴』は芥川賞作で、夫の実家の隣で見たことのない獣を追う日常のずれを書く。こちらは尾道や津軽など旅先の話を一枚の銅版画が結ぶ構成。旅情も味わいたいなら夜行、身近な日常の不気味さなら穴を。













