あらすじ
語り手の佐知子は、自分の感情を正確に説明できません。息子への思い、元夫への未練、若い恋人との関係。どれも割り切れないまま並行して描かれ、事件の輪郭が見えてくるのは終盤です。
読みどころ
著者のデビュー作で、ホラーサスペンス大賞を受けています。怪異ではなく人間の情念が恐ろしいタイプで、読み進めるほど気分が重くなる種類の本です。
こんな人に
おすすめしたいのは。後味の重い心理サスペンスを読みたい人。
同じ作者の『ユリゴコロ』が代表作として知られています。
向かないかもしれない人
語り手の佐知子は胸の内を言葉にするのが苦手で、事件の形が見えてくるのも終盤です。早めに謎の輪郭をつかみたい人や、気分が沈む話を避けたい時期の人には進みの遅さがこたえます。
比べ読み
『十三番目の人格 ISOLA』貴志祐介
どちらも著者のデビュー作で、恐ろしさを人の心の側に置いています。『十三番目の人格』は心を読める女性と多重人格の少女の話で、専門知識を重ねてから土台を崩しにくる運び。こちらは息子の失踪を境に、母親の割り切れない感情が並んで進みます。理屈の積み上げなら貴志作品、情念の濃さなら沼田作品から。
『異端の祝祭』芦花公園
身近な弱みから日常が崩れていく、星の並びもそろった二冊です。『異端の祝祭』は就職に悩む青年が怪しい集団に近づく現代的な入口。『九月が永遠に続けば』に怪異はなく、息子が帰らない朝を境に母親の周りから人が消えていきます。新しい書き手の感覚なら芦花公園、人間の情念ならこちら。









