あらすじ
手記の語り手は、幼い頃から他人の死に強く惹かれてきたと書きます。その淡々とした調子が、かえって読む側を落ち着かなくさせる。現在の側では、主人公の恋人の失踪という別の問題が進んでいく。
読みどころ
加害の告白を読まされ続けるという形式そのものが仕掛けになっています。後半で物語の見取り図が変わり、読み方のやり直しを迫られる。
こんな人に
おすすめしたいのは。重い題材を正面から扱った小説が平気な人。
2017年に映画化。同じ作者の『九月が永遠に続けば』も文庫で読めます。
向かないかもしれない人
他人を手にかけて初めて落ち着ける人物の告白を、長く読み続ける形式です。加害の心理を内側から書いた文章がつらい時期の人や、明るい気分で本を閉じたい人には負担の大きい本です。
比べ読み
『ミザリー』スティーヴン・キング
超自然に頼らず、人間の異常さだけで引っ張る二冊です。『ミザリー』は動けない作家とその熱烈なファンが閉じた家で向き合い、暴力も強めで厚い本。『ユリゴコロ』は四冊のノートの告白を読む形で、淡々とした語りが逆に落ち着かなさを生みます。緊迫した対決ならキング、静かに冷える告白ならこちら。
『愚者の毒』宇佐美まこと
重い題材と、長い時間をまたぐ構成が共通しています。『愚者の毒』は炭鉱町の因縁が数十年後の東京で姿を変えていく話。『ユリゴコロ』は手記の過去と、恋人が消えた現在の問題が並んで進み、後半で全体の見取り図が組み替わる。社会の側の重さを読むなら宇佐美作品、一人の告白の怖さを読むなら沼田作品を。









