あらすじ
由香里は千尋の人格それぞれと対話し、誰がいつ現れるのか、何を怖がっているのかを記録していきます。治療が進むにつれて、十二人のどれにも当てはまらない反応が出てくる。医療の言葉で説明できる範囲と、できない範囲の境目が物語の焦点になります。
読みどころ
著者のデビュー作です。のちの『黒い家』『天使の囀り』と同じく、専門的な知識を積んでから最後に足場を外すやり方が、ここですでに形になっています。
こんな人に
おすすめしたいのは。心理学や精神医療を題材にした話が好きな人。
1998年に映画化されました。同じ作者なら『黒い家』が読みやすい入口です。
向かないかもしれない人
再読性とおすすめ度はともに星3で、人格ごとの対話や治療の記録が続きます。テンポよく怖い場面が来てほしい人や、精神医療を題材にした話が身近でつらい人には合いにくいところがあります。
比べ読み
『九月が永遠に続けば』沼田まほかる
どちらも作者のデビュー作で、星の並びも同じ。『十三番目の人格 ISOLA』は人格の記録を重ね、医療の言葉で説明できる範囲とその外を探る話。『九月が永遠に続けば』は息子が消えたあと周囲も消えていく心理サスペンスで、怪異より人の情念が怖さの源です。理屈の怖さならこちら、重い感情に浸るなら沼田作品を。
『異端の祝祭』芦花公園
人の心の弱いところに怪異が入り込む話として並べられます。こちらは心を読む力を持つ女性が多重人格の少女と向き合い、精神医療の知識を積む構え。『異端の祝祭』は就職の行き詰まりや認められたい気持ちを入口に、奇妙な集団へ近づく現代の話です。専門的な題材ならこちら、今の世相に近い怖さなら芦花公園を。











