あらすじ
春の夜の先斗町、夏の下鴨神社の古本市、秋の大学の学園祭、そして冬、京都の町に流行る風邪。季節ごとの四つの章で、乙女は奇妙な人物たちと出会い、先輩はそのたびに彼女の後を追っては空回りします。酒豪の老人、願掛けでパンツを替えないと誓った男、古本市の神様。現実と幻の境目がゆるい、森見登美彦の京都です。
読みどころ
古めかしくて大げさな文体は、合う人には中毒性があります。乙女の「なむなむ!」と唱える無邪気さと、先輩の情けなさの落差が楽しい。最初の十ページで文体に乗れるかどうかが分かれ目なので、書店で少し立ち読みしてから決めるのもありです。
こんな人に
おすすめしたいのは。京都の夜の街を、あてもなく歩いてみたい人。
2017年にアニメ映画になっています。同じ作者の『夜行』とは、同じ京都でもまるで別の顔です。
向かないかもしれない人
読みやすさは星3で、古めかしく大げさな文体に乗れるかどうかで評価が分かれます。現実味のある恋愛小説や、筋がはっきり進む話を求める人には、遠回りな語りが合わないかもしれません。
比べ読み
『夜のピクニック』恩田陸
どちらも夜を歩く青春ものですが、色合いが違います。『夜のピクニック』は全校で八十キロを歩く行事の一昼夜に、ひとつの賭けを抱えた高校生を追う写実的な話。こちらは京都の夜に幻が混じり、古風で大げさな文体で恋の空回りを書きます。現実の手ざわりを求めるなら恩田作品、言葉の酔い心地を求めるなら森見作品を。
『横道世之介』吉田修一
『横道世之介』は長崎から出てきた十八歳の東京での一年を追う作品です。こちらは春夏秋冬の四章構成で、大学生の先輩が後輩の乙女を追いかけます。等身大の学生生活に浸るなら吉田作品、現実と幻の境目がゆるい京都に迷い込みたいならこちら。読みやすさは吉田作品が一つ上です。













