あらすじ
乗客は国籍も身分もばらばらな十数人。公爵夫人、大佐、家庭教師、セールスマン、執事。ポアロは一人ずつ尋問し、それぞれの証言と、車内に残された手がかりを照らし合わせていきます。やがて、被害者の正体と、過去にアメリカで起きたある誘拐事件とのつながりが明らかになります。
読みどころ
結末を知っている人も多い作品ですが、知っていてもなお、ポアロの推理の運び方を追うのが楽しい。尋問の場面が続く構成なのに、登場人物の個性がくっきりしていて飽きません。最後にポアロが示す選択も、忘れがたいものです。
こんな人に
おすすめしたいのは。名探偵が関係者を集めて謎を解く、王道のミステリが好きな人。
映画は1974年版と2017年版の二つ。同じ作者の『そして誰もいなくなった』と並ぶ代表作です。
向かないかもしれない人
尋問の場面が続く組み立てなので、派手な追跡劇や動きの多い展開を期待する人には静かに映ります。映画で筋を知っていて、推理の過程より意外さだけを求める場合も物足りなさが出ます。
比べ読み
『インシテミル』米澤穂信
閉ざされた場所に集まった人々を疑う構図は共通です。『インシテミル』は高すぎる時給の求人に応じた十二人が地下施設で七日を過ごす話で、館ものの約束事を半ば冗談にする仕掛けが多い厚めの本。雪で止まった列車で尋問を重ねるこちらは、王道の謎解きです。まず型を知るならクリスティー、型崩しは後から米澤作品で。
『Nのために』湊かなえ
証言の食い違いを追う点で『Nのために』も近い一作です。あちらは現場にいた四人の若者がそろって嘘をつき、その動機の方が重く、恋愛小説としても読まれます。こちらはポアロが十数人の乗客を一人ずつ尋問し、車内の手がかりと照らし合わせる組み立て。気持ちに浸るなら湊作品、推理の運びを追うならこちらを。









