あらすじ
島は嵐で本土から切り離され、屋敷には十人のほかに誰もいないはず。子ども部屋に飾られた童謡の詩と、食卓に並んだ十体の人形。一人が死ぬたびに、人形がひとつ消えていく。残された者たちは互いを疑い、犯人を探そうとしますが、そのあいだにも数は減っていきます。
読みどころ
1939年に書かれた小説ですが、テンポは今のサスペンスとまったく変わらない。登場人物が多いのに誰が誰だか迷わないのは、さすがの腕前です。後に書かれた無数の作品がこの本を下敷きにしているので、ミステリ好きなら一度は原典を。
こんな人に
おすすめしたいのは。閉ざされた場所で起きるサスペンスが好きな人。
今回紹介した『十角館の殺人』は、この本を強く意識して書かれた作品です。続けて読むと面白さが倍になります。
向かないかもしれない人
一人死ぬたびに人形が消える筋で、死が繰り返し続きます。人が次々に命を落とす話が苦手な人や、のどかな謎解きを期待する人には、緊張が強すぎるかもしれません。
比べ読み
『インシテミル』米澤穂信
閉ざされた場所に集められた人々が一人ずつ減っていく骨組みは同じで、星もそろっています。『インシテミル』は高額の時給に釣られた十二人が地下の施設で七日を過ごす現代版で、厚めの分量。こちらは孤島の屋敷と童謡の詩という古典の舞台です。原典を先に押さえてから米澤作品に進むと、下敷きにした部分が見えてきます。
『天使のナイフ』薬丸岳
『天使のナイフ』は少年犯罪で妻を失った夫が、新たな事件で疑われる社会派で、罪と償いの重さが前に出ます。こちらは孤島に集められた十人を童謡どおりの死が襲うサスペンスで、テンポの速さが持ち味。社会の問題を考えたいなら薬丸作品、純粋に謎と緊張に浸りたいならクリスティーを。









