あらすじ
高校の数学の授業で、教師が虚数 i について言った一言。それ以来、アイは自分の存在について考え続けます。世界で起きる災害やテロの死者数をノートに書き留め、生き残った自分に後ろめたさを感じる。そんなアイを支えたのは、高校で出会った親友のミナでした。大学、恋愛、震災。アイの人生は、世界の出来事と重なりながら進んでいきます。
読みどころ
アイの悩みは、ときに贅沢にも見えます。けれど「恵まれていることへの罪悪感」を、ここまで正面から扱った小説は珍しい。ミナとの友情の描き方がまっすぐで、終盤は何度も胸が熱くなります。
こんな人に
おすすめしたいのは。自分が恵まれていることに、どこか後ろめたさを感じたことがある人。
同じ作者の『さくら』『漁港の肉子ちゃん』とはまた違う、世界と向き合う西加奈子の作品です。
向かないかもしれない人
主人公の悩みが贅沢に見える場面があり、そこで共感できないと距離を感じます。災害やテロの死者数が繰り返し出てくるので、そうした話題がつらい時期の人には向きません。
比べ読み
『対岸の彼女』角田光代
女性同士の友情が支えになる点で、二冊は近い位置にあります。『対岸の彼女』は大人になってから友だちを作る難しさを十代の回想と重ね、『i(アイ)』は世界の災害やテロと自分の存在を結びつけて考える少女の話です。身近な人間関係から入るなら角田作品、大きな問いに向き合う余力があるなら西作品を。
『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ
『52ヘルツのクジラたち』の題材は虐待とネグレクトで、その重さを誰かの声を聴くことの希望が支えています。『i(アイ)』が扱うのは恵まれていることへの罪悪感で、苦しみの向きが逆です。物語性は町田作品が星5で一段上なので、筋で引っ張られたい日はそちらを先に。














