あらすじ
ストリックランドは、他人の好意も、恩も、女性の人生も、平気で踏みにじります。パリで彼を助けた善良な画家ストルーヴェも、その犠牲になる。やがてストリックランドは南太平洋のタヒチへ渡り、そこで最後の作品に取りかかります。語り手の「わたし」は、彼の死後、その足跡を人々の証言からたどっていきます。
読みどころ
ストリックランドは、友人には絶対にしたくない人物です。それなのに、彼の生き方から目が離せなくなるのが、この小説の不思議な力。金原瑞人の新訳は読みやすく、皮肉の効いた語り手のユーモアもよく伝わってきます。
こんな人に
おすすめしたいのは。安定した生活と、本当にやりたいことのあいだで揺れている人。
読み終えたら、ゴーギャンのタヒチ時代の絵を画集やネットで見てみてください。
向かないかもしれない人
主人公は他人の好意や恩を平気で踏みにじる人物で、作中にはその犠牲になる人も出てきます。好感の持てる主人公に寄り添って読みたい人には、反発ばかりが残るかもしれません。
比べ読み
『老人と海』Ernest Hemingway
星がそろった、一つのことに取りつかれた男の話です。『老人と海』は老漁師が沖でかかった大物と向き合う短い話で、外の自然との一対一の勝負。こちらは家族も恩も踏みにじって絵に向かう画家を、語り手が証言から追います。短い時間で集中して読むならヘミングウェイ、皮肉の効いた人物伝をじっくり味わうならモームを。
『こちらあみ子』今村夏子
『こちらあみ子』はおもちゃのトランシーバーで呼びかけても誰にも答えてもらえない少女の話で、周りと噛み合わない人を内側に近い場所から書きます。こちらの画家も周囲と噛み合いませんが、語り手は距離を取って皮肉まじりに眺めます。軽い今村作品から入り、外から描く古典としてこちらへ進む順も楽しめます。








