棚の前で/こちらあみ子

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棚の前で

『こちらあみ子』ちくま文庫の書影書影:版元ドットコム

こちらあみ子

  • 文学
  • ちくま文庫
  • 分量:軽い

おもちゃのトランシーバーで「こちらあみ子」と呼びかけても、誰も答えてくれない。太宰治賞・三島由紀夫賞受賞作。

おすすめ度
★★★★★
読みやすさ
★★★★★
物語性
★★★★★
実用度
★★★★★
再読性
★★★★★

おすすめ度は、棚の前でが「まず一冊」としてどのくらい強く勧めるかを示す数字です。物語性・再読性・読みやすさと分量から決めています。

版元
筑摩書房
判型
ちくま文庫
刊行
2014年6月
ISBN
9784480431820

あらすじ

書道教室を開く母、優しい父、不良になっていく兄。あみ子が良かれと思ってしたことをきっかけに、家族はばらばらになっていきます。けれど語りはあみ子の目線に寄り添っているので、彼女自身は何が起きているのかよく分かっていない。その無垢さが、読む側には痛いほど伝わってきます。文庫には、表題作のほかに短編「ピクニック」などが収められています。

読みどころ

読みやすい文章なのに、ページをめくるたびに胸が詰まる。あみ子を誰も責められないし、家族を責めることもできない。今村夏子のデビュー作で、のちの芥川賞作家の原点がすでにここにあります。

こんな人に

おすすめしたいのは。周りと違うことで、うまく居場所を見つけられなかった記憶がある人。

映画版は2022年の公開。同じ作者の芥川賞作『むらさきのスカートの女』とあわせてどうぞ。

向かないかもしれない人

あみ子の善意が家族をばらばらにしていく流れで、誰も責められない苦しさが続きます。筋の起伏より語りの痛みが中心なので、きれいに決着する話が読みたい人には重たく感じられます。

比べ読み

『変身』Franz Kafka

家族の中で浮いてしまう者を描いた短い二冊です。『変身』は虫になって働けなくなった男と、彼を持て余していく家族の話。こちらは書道教室を開く母や兄のいる家が、あみ子の善意をきっかけに崩れていく過程を、本人の目線のまま追います。古典から入りたい人はカフカ、身近な家庭の空気を見たい人は今村作品を。

『コンビニ人間』村田沙耶香

周りとずれた語り手の目で世界を見る点が共通しています。『コンビニ人間』は恵子の淡々とした語りによって周囲の圧の方が異様に見え、笑える場面も多い本。あみ子の語りは無垢で、家族が崩れていくさまが読む側にだけ伝わり胸が詰まります。笑いを交えて読みたいなら村田作品、痛みに向き合う準備があるならこちらを。

stock

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