あらすじ
表題作のほかに、疎遠だった母の家を訪ねる娘の話、夫と喧嘩して実家へ帰った妻のもとに届く不思議な手紙の話など、家族の形をめぐる短編が並びます。どの話も、大きな事件は起きず、けれど最後のページで静かに景色が変わります。
読みどころ
表題作は、何気ない会話の中に、二人の関係が少しずつ見えてくる構成が見事で、最後の一文で思わず本を閉じてしまうほど。短編集なので、通勤の往復で一話ずつ読めます。
こんな人に
おすすめしたいのは。家族に、ずっと言えずにいることがある人。
短編集なので、どの話から読んでも大丈夫です。まずは表題作から。
向かないかもしれない人
物語性は星3で、大きな事件や先の読めない展開はほとんどありません。筋の起伏で引っぱられたい人や、謎や対決のある話を求める気分の日には、会話中心の運びが静かすぎるかもしれません。
比べ読み
『ツナグ』辻村深月
どちらも身近な人に言えずにきたことを扱う本で、読みやすさは同じ星5です。『海の見える理髪店』は大きな事件の起きない会話の中で関係がにじみ出る静かな作り、『ツナグ』は死者と一度だけ会えるという仕掛けがあり、苦い後味の章も混じります。穏やかな話から入るなら荻原作品を先に。
『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ
家族の形をめぐる話として並べられますが、分量の感触が違います。こちらは母を訪ねる娘や実家に帰った妻など、話ごとに別の家族が出てくる短編集。『そして、バトンは渡された』は親が何度も替わった一人の女子高生を長編で追い、食卓の場面の明るさが前に出ます。通勤の合間に一話ずつ読むならこちらを。








