あらすじ
貴子と融は、同じ年に生まれた異母きょうだいです。融はそのことで貴子を避け、貴子も近づかずにきた。歩き出す前、貴子は心の中で小さな賭けをします。この歩行祭のあいだに、自分から融に話しかけると。親友の美和子、融の友人の忍、アメリカから飛び入りで来た少年。夜の道を歩きながら、それぞれが胸にしまっていたことが、少しずつこぼれ出てきます。
読みどころ
2005年に第2回本屋大賞と吉川英治文学新人賞を受けました。歩行祭は、作者の母校の茨城県立水戸第一高校で実際に行われている「歩く会」がもとになっていて、作者自身も設定はほぼ母校の行事だと話しています。事件らしい事件は起こらず、ただ歩いて、しゃべって、疲れていく。それだけで一晩が終わるのに、読み終えると自分の高校の夜を思い出す。2006年に多部未華子の主演で映画になりました。
こんな人に
おすすめしたいのは。修学旅行の夜のほうが、昼の観光より覚えている人。
同じ作者の短編集『図書室の海』に、この話の前日を描いた「ピクニックの準備」が入っています。読み終えてからどうぞ。
向かないかもしれない人
夜道を歩きながら話すことが中心で、事件らしい出来事は起こらない。謎や大きな展開で引っぱる話を期待すると、ゆったりした進み方がもどかしく感じられそうだ。
比べ読み
『横道世之介』吉田修一
事件らしい事件が起きない青春ものという点で近い二冊。夜のピクニックは歩行祭の一晩に時間を絞り、『横道世之介』は上京した十八歳の一年を追って、周囲の人たちの記憶の中に彼が残っていく姿を書く。短い時間の濃さを味わうなら前者、ゆるやかな一年に付き合いたい気分なら後者が向く。
『砂漠』伊坂幸太郎
『砂漠』は読みやすさが星5つで、仙台の大学生五人の四年間を麻雀やボウリング、少しの事件とともに追います。夜のピクニックは高校最後の一晩、異母きょうだいの間の小さな賭けが軸。にぎやかな仲間の話を先に読み、静かに胸の内がこぼれる夜の話へ移ると温度差がよく分かる。












