あらすじ
2015年の単行本(十五編)を文庫で二冊に分けた、その一冊目です。入っているのは表題作のほか「月へ」「結縄」「太平洋横断海底トンネル小史」「心智五行」「愛のアルゴリズム」「文字占い師」の七編。SFの道具立てを使いながら、扱われているのは家族と歴史の記憶です。
主な登場人物
- ジャック
- 表題作の語り手。アメリカで育つ少年。
- 母
- 中国の村の出身で、香港を経てアメリカへ渡ってきた。折り紙の動物に息を吹き込む。
- 父
- アメリカ人。
読みどころ
表題作はネビュラ賞(2011年)、ヒューゴー賞と世界幻想文学大賞(2012年)の三つを受けました。短いのに、読み終えてから話の形が変わって見えるタイプの短編が並んでいます。一編ごとの長さもまちまちで、少しずつ読めます。
こんな人に
おすすめしたいのは。家族や移民の物語をSFの形で読みたい人。
残りの八編は『もののあはれ ケン・リュウ短編傑作集2』に入っています。同じ著者には『母の記憶に』などの短編集もあります。
向かないかもしれない人
SFの道具立ては入口にとどまり、中心は家族と歴史の記憶です。宇宙や技術の仕掛けそのものを存分に味わいたい人には、題材が思ったより身近に映るかもしれません。
比べ読み
『火星年代記』レイ・ブラッドベリ
短編を積み重ねて歴史を浮かび上がらせる点が似ています。『火星年代記』は入植から去っていくまでを年代順に並べ、一冊で一つの長い流れになる作り。ケン・リュウのほうは一編ごとに独立していて、家族や移民の記憶に焦点が寄ります。通しで読む時間があるならブラッドベリ、合間に一編ずつ拾いたいならこちらを。
『アルジャーノンに花束を〔新版〕』Daniel Keyes
星の並びがそろった二冊ですが、形はまるで違います。『アルジャーノンに花束を』は一人の青年の経過報告で通す長編で、文体そのものが変化していく仕掛け。こちらは長さのまちまちな七編を収めた短編集です。一人の人生に長く付き合いたいときはキイス、短い話をいくつか渡り歩きたいときは『紙の動物園』を。











