あらすじ
話は柊子と美海の二人が、かわるがわる語っていきます。柊子は夫の浮気を責めません。彼がいるときも、いないときも、全部ひっくるめて自分のものにしたいと考えている。美海は大人びていて、古い映画や音楽に詳しい少女です。柊子の母の桐子は、家事をしたことがなく本ばかり読んできた人で、この人がいい味を出しています。
読みどころ
2007年に単行本が出て、島清恋愛文学賞を受けました。ふつうなら嫉妬や怒りになる場面で、柊子は静かに相手を所有しようとする。その理屈が、読むうちに分かるような、分かりたくないような気持ちにさせます。四十五歳と十五歳の目が交互に並ぶので、同じ男が違って見えるのも面白いところです。
こんな人に
おすすめしたいのは。きれいに割り切れない大人の恋愛を、じっくり読みたい人。
同じ作者の『赤い長靴』も、夫婦のあいだのずれを静かに描いた本です。
向かないかもしれない人
浮気をする夫を責めない妻の理屈に、はっきりした善悪や解決を求める人はもやもやしそうだ。実用度は星1で、恋の悩みに答えをくれる種類の本ではない。
比べ読み
『さくら』西加奈子
「がらくた」は夫の浮気を受け入れる妻と十五歳の少女が交互に語る大人の恋愛の話で、「さくら」は兄と妹と犬のいる家族を次男が振り返る話。読みやすさは「さくら」が星一つ上。家族の話に浸りたい時は「さくら」、割り切れない恋愛の理屈に付き合う気分の時は「がらくた」を。
『永い言い訳』西川美和
どちらも夫婦のあいだの裏切りが出発点。「永い言い訳」は妻の死後に悲しめない夫が他人の子の世話をする男の側の話で、「がらくた」は浮気を知りながら相手を静かに所有しようとする妻の側。夫の目から入るなら「永い言い訳」、妻の理屈を先に知りたいなら「がらくた」から。









