あらすじ
客室の掃除、予約の管理、トラブル処理。仕事の描写が具体的です。事件はいずれも日常の謎で、人が死ぬことはありません。沖縄の食べ物や気候も細かく書かれます。
もう少し詳しく(結末には触れません)
浩美は親友のサキと卒業旅行に行くお金を貯めるため、夏休みに石垣島の宿でアルバイトを始めます。働きぶりを見込まれて、人手の足りない那覇の宿を手伝うことに。それが国際通りの裏手にある安宿「ホテルジューシー」でした。収録は「ホテルジューシー」「越境者」「等価交換」「嵐の中の旅人たち」「トモダチ・プライス」「≠」「微風」の七話です。サキが歯科医院で働く『シンデレラ・ティース』は同じ夏を描いた姉妹作で、二人が電話で近況を話す場面もあります。続きは『楽園ジューシー』。
主な登場人物
- 柿生浩美(ヒロちゃん)
- 大学二年生。大家族の長女で、弟や妹の面倒を見てきたしっかり者。つい人の世話を焼く。
- オーナー代理(安城さん)
- 昼間はだらしなく寝てばかりなのに、夜になると急にてきぱき指示を出す。
- クメばぁとセンばぁ
- 掃除を受け持つ双子のおばあさん。沖縄流のおおらかさそのもの。
- 比嘉さん
- 朝ごはんの係。沖縄料理がおいしい。
読みどころ
働く話と日常の謎を、一皿に盛るのが坂木作品の型です。読み口が軽く、旅に出たくなります。
こんな人に
おすすめしたいのは。沖縄を舞台にした明るい話が読みたい人。
同じ作者の『和菓子のアン』も働く人の連作です。
向かないかもしれない人
事件はどれも日常の謎で、人が死ぬことはない。緊張感のある本格的な推理や、手に汗にぎる事件を求めている人には軽すぎると感じるかもしれない。
比べ読み
『幸福な食卓』瀬尾まいこ
どちらも軽い文章で人のつながりを書く。『幸福な食卓』は父が父をやめると宣言する家族の話で、事情を語りきらないまま食卓が続く。本作は沖縄の宿で働く毎日と日常の謎が中心。家族の機微を読みたい時は食卓を、旅先気分で笑いたい日は本作を先に。
『円卓』西加奈子
大阪の団地で孤独にあこがれる女の子の一年を追う『円卓』と、沖縄の安宿で働く大学生の夏休みを書く本作。笑える場面が多いのは共通だが、円卓は終盤に重い話が置かれる。明るさを最後まで保ちたいなら本作、笑いの奥の影も味わいたい時は円卓へ。










