あらすじ
真面目だが肝心なところで弱い長兄、井戸の底で蛙になって暮らす次兄、化けるのが下手な末弟。そして宝塚好きの母。矢三郎は、足腰の弱った天狗・赤玉先生の世話を焼き、天狗の力を得た美女・弁天に振り回され、宿敵の夷川家とやり合いながら、京都の町を跳ね回ります。父の死の真相も、やがて明らかになっていきます。
読みどころ
狸たちの会話が軽妙で、ページをめくるたびに京都の路地を狸の目線で歩いている気分になる。ふざけた場面が続くぶん、家族が肩を寄せ合う場面が効いてきます。偽電気ブランや五山送り火など、京都の小道具の使い方も楽しい。
こんな人に
おすすめしたいのは。にぎやかな家族の話で、気持ちよく笑って泣きたい人。
2013年にアニメ化されました。続編の『有頂天家族 二代目の帰朝』も文庫で出ています。
向かないかもしれない人
天狗や化け狸が当たり前に出てくる世界で、古風な語りも続きます。現実寄りの家族小説を求める人や、ふざけた会話の多さが苦手な人には、乗り切れない場面が出てきそうです。
比べ読み
『対岸の彼女』角田光代
『対岸の彼女』は専業主婦と同い年の女社長が、大人になってからの友情の難しさに向き合う話で、実用度がこちらより一つ高め。狸の一家が京都を跳ね回るこちらは、ふざけた場面の合間に家族の結びつきが効いてきます。身近な人間関係を見直したい時期は角田作品、笑いの多い家族ものを読みたい時期は森見作品を。
『i(アイ)』西加奈子
星の並びは同じで、どちらも家族のつながりを軸にしています。『i(アイ)』は数学の授業で聞いた一言が心に刺さる少女の話で、自分の居場所を問う内向きの作品。こちらは狸の兄弟と母が、天狗や宿敵の一家と渡り合うにぎやかな話です。静かに考えたい夜は西作品、気持ちよく笑いたい夜は森見作品が合います。













