あらすじ
語り手は小学生のキクりん。母の菊子、通称・肉子ちゃんは、惚れっぽくてすぐ男に騙され、そのたびに娘を連れて町を移ってきました。今は北の漁港の町で、焼肉屋の大将に世話になりながら暮らしています。学校の女子グループのいざこざ、変わった男の子との交流、町の人たちの噂話。キクりんの毎日が、少し大人びた目で語られます。
読みどころ
肉子ちゃんの台詞がいちいち可笑しく、声に出して笑ってしまう場面がいくつもあります。一方で、キクりんが母親に向ける複雑な気持ちは、思春期の入口ならではの痛さがある。笑いながら読んでいると、終盤のある場面で、それまでの可笑しさがふいに別の意味を帯びてきます。
こんな人に
おすすめしたいのは。親のことを、好きなのに少し恥ずかしいと思ったことがある人。
2021年に明石家さんまのプロデュースでアニメ映画になりました。同じ作者の『さくら』と続けて読むのもおすすめです。
向かないかもしれない人
母の台詞の可笑しさが続く一方、女子グループのいざこざや思春期の痛い場面も出てきます。品のよい静かな家族小説を期待する人には、にぎやかな語りの勢いが合わないかもしれません。
比べ読み
『まほろ駅前多田便利軒』三浦しをん
どちらも町に根を張る人々の暮らしを笑いまじりに書く作品で、星の付き方も一致します。『まほろ駅前多田便利軒』は便利屋の男と転がり込んだ同級生の二人組が中心で、少し乾いた空気。こちらは母と娘の漁港の暮らしで、母の台詞の可笑しさが前に出ます。男二人の距離感を読むなら三浦作品、親子の照れくささなら西作品。
『月曜日の抹茶カフェ』青山美智子
『月曜日の抹茶カフェ』は十二か月の縁が順に手渡されていく軽い連作で、気持ちを整えたい夜に向きます。こちらは小学生の語り手が母への複雑な気持ちを抱える一本の話で、笑いの奥に思春期の痛さがあります。疲れた日は青山作品、笑いながら胸がざわつく話を読みたい日は西作品を。














