あらすじ
母は自分の母(娘にとっての祖母)を深く愛しており、その価値観のまま娘に接します。娘の側から見ると、その愛情は別のものに見える。震災や同居といった出来事が、両者の記憶で食い違います。
読みどころ
どちらが嘘をついているかではなく、両方が本当だと分かるところがこの小説の怖さです。家族を扱った作品としても読めます。
こんな人に
おすすめしたいのは。語りのずれを味わいたい人。
映画版は2022年公開。同じ作者の『贖罪』も多視点の作品です。
向かないかもしれない人
謎がすっきり解けて終わるミステリを期待すると、狙いとずれる。焦点は母と娘の記憶の食い違いにあり、親子関係がつらい時期の人には重く響く。
比べ読み
『ザリガニの鳴くところ』Delia Owens
どちらも事件を入口に、一人の女性の生き方へ視線が移っていく。『ザリガニの鳴くところ』は湿地の自然描写が美しく、分量は厚め。『母性』は母の手記と娘の回想が同じ出来事を食い違わせ、語りのずれで読ませる。じっくり浸れる時間があるなら『ザリガニ』、短めに濃い緊張がほしいならこちら。
『天使のナイフ』薬丸岳
『天使のナイフ』は少年法を被害者側と加害者側の双方から問い、社会派ミステリとして謎を緩めない。『母性』は謎解きより、母と娘のどちらの記憶も本当だと分かっていく怖さが中心。犯人探しの手応えを求めるなら『天使のナイフ』、家族の内側のずれを見たいならこちらを先に。













