あらすじ
現代側では同時多発テロ後の空気が、過去側ではスペイン内戦とパリの状況が描かれます。絵の移送や保険、外交上の駆け引きなど、美術館の仕事の具体的な手順も出てきます。
読みどころ
美術作品は誰のものかという問いが全編を貫きます。著者の美術館勤務の経験が生きていて、展示にまつわる描写には説得力があります。
こんな人に
おすすめしたいのは。美術と歴史の両方に関心がある人。
美術を扱った作品では『たゆたえども沈まず』『リーチ先生』も文庫にあります。
向かないかもしれない人
美術や国際情勢に関心が薄い人には、移送や保険、外交の描写が長く感じられるかもしれない。二つの時代を行き来するので、筋を一本で追いたい人にも負担になる。
比べ読み
『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬
戦争を扱う二冊でも距離の取り方が違う。『同志少女よ、敵を撃て』は独ソ戦の狙撃兵として戦場の只中を走り、冒険小説の速さがある。『暗幕のゲルニカ』は戦闘ではなく一枚の絵の行方を追い、移送や外交の駆け引きで緊張を作る。戦場の迫力を求めるなら『同志少女』、美術と歴史の交差を見たいならこちら。
『きみはいい子』中脇初枝
『きみはいい子』は虐待や学級崩壊を同じ町の五つの話で見せる、身近な距離の作品。『暗幕のゲルニカ』はスペイン内戦と同時多発テロ後という二つの時代をまたぐ大きな構えで、美術館の仕事の手順まで出てくる。生活の足元を見つめたい日は『きみはいい子』、視野を広く取りたい日はこちらから。













