あらすじ
当時のパリでは日本の美術が流行していました。林の商売の手腕、テオの苦悩、フィンセントの制作。史実に基づく人物と、作者が置いた人物が同じ画面で動きます。
読みどころ
絵を描く才能ではなく、それを世に出す仕事のほうを主役にした作品です。美術小説として、この作者の代表作の一つに数えられます。
こんな人に
おすすめしたいのは。ゴッホや印象派に関心がある人。
美術を扱った長編に『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』があります。
向かないかもしれない人
主役は絵を描く才能ではなく売る側の仕事で、史実と創作の人物が混ざる。ゴッホの伝記として事実だけを追いたい人や、美術への関心が薄い人には遠回りに感じられるかもしれない。
比べ読み
『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬
どちらもヨーロッパの歴史を舞台にした長編。『同志少女よ、敵を撃て』は独ソ戦で狙撃兵になった少女の話で、戦闘の緊迫感と戦争の非情さが押し寄せる。たゆたえども沈まずは十九世紀パリの美術の商売を軸に、史実の人物と作者の置いた人物が並んで動きます。張りつめた展開なら同志少女、芸術の周辺に浸るなら本作。
『ある男』平野啓一郎
『ある男』は、法要で遺影が弟ではないと言われる場面から始まり、それまでの人生を手放して生き直すことは可能かを問う現代の話。たゆたえども沈まずは、売れない画家を世に出す側の仕事を主役に据えた歴史ものです。謎の引きで読み進めたい日はある男、ゴッホや印象派の時代の空気に浸りたい日は本作が向く。













