あらすじ
どの話も、上品な言葉づかいと古風な屋敷を舞台に、静かに進んでいきます。お嬢様に仕える小間使い、別荘の管理を任された女性、料理人を雇った富豪の家。登場人物はみな礼儀正しく、教養があり、本をよく読んでいる。その整った世界の裏側で、何かがずれていく。
読みどころ
一話ごとに短く、最後のページをめくる前に一呼吸おきたくなる作りです。怖がらせる描写はほとんどないのに、読み終えると背筋が寒い。作中に古今の小説の名前がよく出てくるので、本好きほどニヤリとできます。
こんな人に
おすすめしたいのは。短い話で、後味の悪さをじっくり味わいたい人。
一話ずつ読めるので、寝る前に一篇ずつ。ただし、夜中に読むと少し眠れなくなるかもしれません。
向かないかもしれない人
怖がらせる描写はほぼないものの、どの話も後味の悪さが残ります。すっきりした気分で本を閉じたい人や、寝る前に明るい話を読みたい人には、静かに冷える五編は向かない夜があります。
比べ読み
『迷路館の殺人』綾辻行人
星の並びが同じで、どちらも作中に本や小説が深く関わります。『迷路館の殺人』は地下に迷路のある館で作家たちが競作を命じられ、作中作と現実が重なる本格もの。こちらは読書サークルの周辺で起きる五つの短い出来事で、上品な世界の裏側がずれていきます。館と仕掛けの遊びなら綾辻作品、短く冷える話なら米澤作品を。
『頼子のために』法月綸太郎
『頼子のために』は娘を殺された父の手記から始まる作品で、一つの家族の悲劇を掘り下げていきます。こちらは小間使いや別荘の管理人など、立場の違う人物をめぐる五編で、どれも礼儀正しい言葉の下に暗いものが潜む作り。重い一本に浸るなら法月作品、一話ずつ背筋の冷えを味わうならこちら。














