あらすじ
一編ごとに主人公が替わります。学校に馴染めない少年、町に越してきた女性、老人。それぞれが日常の隙間から別の世界に足を踏み入れ、戻る者と戻らない者に分かれます。
読みどころ
怖さと懐かしさが同じ場所から出てくるのがこの作者の特徴です。文章が平易で、幻想小説を読み慣れていなくても入りやすい一冊になっています。
こんな人に
おすすめしたいのは。土地の記憶を扱った話が好きな人。
デビュー作『夜市』と合わせて読むと作風がよく分かります。
向かないかもしれない人
一編ごとに主人公が替わる連作で、一人の人物を最後まで追う長編の手応えはありません。怖さより懐かしさが前に出るので、強い恐怖を求めてホラーの棚を見ている人には穏やかすぎます。
比べ読み
『雨月物語』上田秋成
日本の怪異譚の源流と、その流れを今の町に移した連作として並べられます。『雨月物語』は死者や蛇の化身が人を追う江戸の九編。『草祭』は美奥という町を舞台に、日常の隙間から別の世界へ入った人々の五つの話がゆるくつながります。古典の型を知ってから読むと、恒川作品の懐かしさの出どころが見えてきます。
『巷説百物語』京極夏彦
怪異を扱う連作でも、向きが逆です。『巷説百物語』は恨みを妖怪のしわざに仕立てて片をつける江戸の仕掛けもの。『草祭』は町の暮らしのすぐ隣に本物の異界があり、足を踏み入れた人が戻るかどうかで話が分かれます。からくりを楽しむなら京極、境目の向こうへの憧れと怖さを味わうなら恒川です。














